育成就労の転籍要件―日本語力で定着する職場をつくる

最終更新日:2026年10月9日

  • 2027年4月に始まる育成就労では、外国人材が自分の希望で勤め先を変わる「転籍」ができるようになります。条件は、同じ受け入れ企業で原則2年働くこと、技能の基礎試験に合格すること、日本語試験に合格することの3つです。
  • 日本語試験の合格ラインは、建設・製造・食品製造がJFT-Basic175点以上またはN4、介護がJFT-Basic200点以上またはN4です。建設・製造・食品製造では、N4に合格していなくてもJFT-Basicで175点以上を取れば転籍できます。
  • 受け入れ企業ができることは、日本語教育を進めたうえで、現場で日本語が通じ、相談できる関係を1年目のうちにつくることです。

育成就労の転籍とは、育成就労で働く外国人材が、同じ仕事の分野(業務区分)の別の受け入れ企業に移って働き続けることです。 技能実習制度では、本人の希望で勤め先を変わることは原則としてできません。
2027年4月1日に始まる育成就労では、条件を満たせば本人の希望で転籍できるようになります。
この記事では、転籍の条件と、条件を満たしたあとも同じ職場で働き続けてもらうために日本語力がどう関わるかを解説します。

(出典: 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」)

育成就労で転籍できる条件

育成就労の本人の意向による転籍の要件一覧。同じ受け入れ企業で分野ごとに1〜2年の就労、技能の基礎試験(建設・製造は技能検定の基礎級、介護は介護育成就労評価試験の初級)の合格、日本語試験(建設・製造はJFT-Basic175点以上またはN4、介護はJFT-Basic200点以上またはN4)の合格、優良な転籍先で受け入れ人数が3分の1以内、転籍先から転籍前の企業への費用補塡。建設・介護・製造・食品製造はいずれも就労期間2年

転籍の条件は、同じ受け入れ企業で働いた期間・技能試験・日本語試験の3つです。
期間と日本語の合格ラインは分野ごとに決まっていて、建設・介護・製造・食品製造はいずれも期間が2年です。
移る先の受け入れ企業にも、優良と認められていることと、転籍で受け入れる人数が全体の3分の1までという条件があります。

① 同じ受け入れ企業で2年働く

転籍できるのは、同じ受け入れ企業で決められた期間を働いたあとです。
この期間は分野ごとに1年か2年で決まっていて、建設・介護・製造・食品製造はいずれも2年です。
受け入れ企業が自社の判断で、この期間を1年に短くすることもできます。 2年のままにする受け入れ企業は、2年目に給料を決められた率以上に上げる必要があります。 建設分野では、分野別協議会が毎年公表する昇給率が、その基準です。

(出典: 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q50・Q51)
(出典: 出入国在留管理庁「建設分野における育成就労制度の運用に関する方針」)
(出典: 出入国在留管理庁「介護分野における育成就労制度の運用に関する方針」)
(出典: 出入国在留管理庁「工業製品製造業分野における育成就労制度の運用に関する方針」)
(出典: 出入国在留管理庁「飲食料品製造業分野における育成就労制度の運用に関する方針」)

② 技能の基礎試験に合格する

入社から1年以内に受ける、仕事の基礎的な試験です。
建設・製造は技能検定の基礎級、介護は介護育成就労評価試験の初級が該当します。

③ 日本語試験に合格する

日本語試験の合格ラインは、分野ごとに次のとおりです。

  • 建設・製造・食品製造:JFT-Basicで175点以上、または日本語能力試験N4
  • 介護:JFT-Basicで200点以上、または日本語能力試験N4

JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)は250点満点のパソコン試験です。 145点以上が入国時に必要なレベル、175点以上が転籍のレベル、200点以上が日本語能力試験N4と同じレベルにあたります。 日本語能力試験N4の目安は「日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる」です。
建設・製造・食品製造では、N4に合格していなくてもJFT-Basicで175点以上を取れば転籍できます。 制度の資料では、この合格ラインを「A2.1相当」(建設・製造・食品製造)、「A2.2相当」(介護)と表記しています。

(出典: 出入国在留管理庁「育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)」)
(出典: 国際交流基金「2026年8月からJFT-BasicはA1、A2.1も判定できるようになります」)
(出典: 日本語能力試験「N1〜N5:認定の目安」)

移る先の受け入れ企業の条件と費用

転籍先は、試験の合格率や法令を守っている状況から「優良」と認められた受け入れ企業に限られます。
転籍で受け入れる人数は、その企業で働く育成就労の外国人材全体の3分の1までです。
転籍された側の受け入れ企業には、採用にかかった初期費用の一部が転籍先から支払われる仕組みがあります。
金額を決める告示は、2026年10月時点で未公表です。

(出典: 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q48・Q53〜Q55)
(出典: 厚生労働省「育成就労制度の概要」)

技能実習生・育成就労の現場で転籍につながりやすい3つの場面

条件がそろった外国人材が転籍を選ぶかどうかは、職場での1〜2年の経験で決まります。
別の記事で技能実習生が失踪してしまう理由として挙げた3つの背景は、育成就労の転籍にもそのまま当てはまります。

指示が伝わらず、ミスと注意が繰り返される

現場の指示が理解できないままミスが続くと、注意を受ける回数が増えます。 注意の理由がわからないと、本人は「嫌われている」と受け取り、職場に居づらくなります。

日本語で相談できる相手がいない

生活や仕事の不安を日本語で話せる相手が職場にいないと、相談先は同じ国の知人やSNSに移り、転籍先の情報もその経路で入ってきます。 休憩中に日本語で雑談ができる関係は、転籍を考える前に相談してもらえる土台です。

給料の額面だけで職場を比べている

給与明細の控除や、手取りと額面の違いが日本語で理解できないと、他社との比較は額面の数字だけになります。 契約内容や住居費・光熱費の控除をやさしい日本語で説明し、納得してもらえる関係が必要です。

(関連記事: 技能実習生が失踪してしまう理由は何か)

転籍の日本語ラインは特定技能へ進む途中にあります

育成就労から特定技能までの日本語能力の4段階。開始時はN5(またはJFT-Basic145点以上、または100時間以上の講習)、転籍時はN4またはJFT-Basic175点以上(介護は200点以上)、特定技能1号への移行時はN4、特定技能2号への移行時はN3。介護分野は入国時からN4

日本語の合格ラインは、入国時がN5(JFT-Basic145点以上)、転籍時がJFT-Basic175点以上またはN4、特定技能1号に進むときがN4またはJFT-Basic200点以上、特定技能2号に進むときがN3です。
建設・製造・食品製造では、N4に届く前の175点で転籍できるため、転籍できる時期は特定技能1号に進む時期より先に来ます。 受け入れ企業には、育成就労で費用負担を含めた日本語教育の取り組みが求められているため、日本語教育は転籍の有無にかかわらず進めることになります。

日本語が伸びた外国人は、指示の理解が進んで注意を受ける回数が減り、日本人社員との会話が増えていきます。
休憩中に日本語で話しかけるようになった技能実習生の事例や、介護の現場で約8ヶ月で夜勤に配属された特定技能の外国人の事例では、日本語の上達と同時に職場での役割が広がりました。 職場での役割と人間関係が広がることが、転籍の条件を満たしたあとも同じ職場に残る理由です。

(関連記事: 外国人材の日本語教育―企業の課題と2027年からの変化) (関連記事: 特定技能移行に必要な日本語レベル―どこでN5・N4・N3が必要か) (関連記事: 介護の外国人材に夜勤を任せる日本語力―8ヶ月で配属した方法) (導入事例: ベトナム人が、休憩中に日本語で話しかけるようになりました)

受け入れ企業が1年目にできる3つのこと

① 転籍の試験を日本語教育の計画に入れます

2年がたつ前に、本人が技能の基礎試験と日本語試験に合格できる計画を立てておくと後が楽です。
日本語の目標はまず転籍のライン(JFT-Basic175点。介護は200点またはN4)に置き、そのまま特定技能1号に必要なN4(またはJFT-Basic200点以上)につなげてください。

② 現場で日本語が通じる状態をつくります

指示は1文を短くし、作業の順番どおりに伝えます。 伝えたあとは「わかりました」で終わらせず、作業の内容を本人の言葉で言ってもらうのが確認の基本です。

(関連記事: 外国人材の「わかりました」―ミスを防ぐ現場の確認方法)
(関連記事: やさしい日本語の作り方―外国人に伝わる指示の出し方)

③ 日本語で相談できる担当者を決めます

仕事と生活の相談を受ける担当者を決め、本人に名前と相談のしかたを伝えておきます。 月に1回、短い時間でも日本語で近況を聞く場があると、不満が転籍の相談になる前に把握できます。

転籍を選ばれにくい職場をつくる日本語教育―むすびばの体制

N4合格に加えて、技能実習制度と同様に育成就労でも受け入れ企業が求めていることは、入ってきた外国人材に現場で日本語が通じるかどうかです。 むすびばが目指すのは、点数だけではなく現場で仕事が回る状態です。
そのために、次の3つの力を職場で毎日使う表現から鍛えます。

  • 聞く力:「明日は8時に倉庫に集合です」「先に安全帯を確認してください」を聞き取る力です。
  • 話す力:「ネジが足りません」「この順番で合っていますか」と短い文で伝える力です。
  • 相談する力:「来月、家族のことで相談があります」「給料の明細がわかりません」と自分から話しかける力です。

そのうえで、制度の要件とも両立できる体制を整えています。

  • 登録日本語教員が在籍しています。
  • 就労開始前のA1相当・100時間講習に対応できる体制があります。
  • 就労開始後も100時間の日本語教育を継続して行います。
  • 特定技能移行に向けたN4対策プログラムを実施しており、N5相当からN4合格までの3年間を伴走できます。

建設に特化した日本語コースを業界で初めて開設しました。
介護・製造の現場でも、職場で毎日使う表現からレッスンを組み立てます。 料金は1コマ60分・1,000円で、入会金・教材費は無料です。

よくある質問

Q1. 日本語教育を控えれば、転籍の条件を満たす人が減って定着につながりますか?
育成就労では、受け入れ企業に費用負担を含めた日本語教育の取り組みが求められています。 日本語試験は本人が自分で受けることもできるため、日本語教育の有無と転籍の条件は切り離して考える必要があります。 日本語教育を進めて現場で通じる状態をつくることが、条件を満たしたあとも定着する職場への近道です。

Q2. 転籍で外国人材が移った場合、採用にかかった費用は戻りますか?
転籍先の受け入れ企業が、転籍前の受け入れ企業に初期費用の一部を支払う仕組みが設けられます。 金額は本人がいた期間に応じて計算され、金額を決める告示は2026年10月時点で未公表です。

Q3. 転籍の日本語試験は、どれを受ければよいですか?
建設・製造・食品製造では、JFT-Basicで175点以上を取るか、日本語能力試験N4に合格すれば条件を満たします。 介護では、JFT-Basicで200点以上、または日本語能力試験N4の合格です。 2つの試験は実施時期が異なるため、2年がたつ時期から逆算して受験日を決めてください。

Q4. 介護だけ合格ラインが高いのはなぜですか?
介護は入国時からN4またはJFT-Basic200点以上が必要な分野で、転籍時も同じラインが続くためです。 建設・製造・食品製造は入国時がN5(JFT-Basic145点以上)のため、転籍時のラインが1段上のJFT-Basic175点以上に置かれています。

(出典: 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」)
(出典: 国際交流基金「2026年8月からJFT-BasicはA1、A2.1も判定できるようになります」)

この記事を書いた会社

むすびば株式会社は、技能実習生・特定技能などの外国人材向けにオンライン日本語教室を運営し、人と人のいい関係性を築く日本語教育を理念としています。
建設・介護・製造業の現場で毎日使う表現から組み立てた少人数・会話中心のレッスンを、1コマ60分・1,000円、入会金・教材費無料で提供しています。
登録日本語教員が在籍し、就労開始前のA1相当・100時間講習、就労開始後の100時間の日本語教育、特定技能移行に向けたN4対策プログラムに対応しています。

育成就労の定着対策に使える資料をダウンロードできます

このページの下部から、むすびばの資料をダウンロードできます。
プログラムの特長や、カリキュラムの内容が記載されたパンフレットを無料でダウンロードいただけます。
資料は建設業向け・介護士向け・全職種向けの3種類から選べます。
建設現場で受け入れている企業は建設業向け、介護施設は介護士向け、製造業や複数の業種で受け入れている企業、転籍対策の計画を全体で見たい企業には全職種向けの資料が合います。
2週間の無料体験を行っておりますので、お気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

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