やさしい日本語の作り方―外国人に伝わる指示の出し方

最終更新日:2026年10月2日

  • やさしい日本語は、受け入れ企業側の話し方を変えるだけで今日から始められる、伝え方の技術です。
  • 作り方は「情報を整理して短く切る→外国人材にわかる言葉に置き換える→伝わったかを確認する」の3ステップで、出入国在留管理庁と文化庁のガイドラインに沿っています。
  • やさしい日本語で指示が通る状態を作りながら、外国人材側の日本語力をN5相当からN4へ伸ばすことで、2027年4月に始まる育成就労制度にも備えられます。

やさしい日本語とは、難しい言葉を言い換えるなど、相手に配慮したわかりやすい日本語のことです。
出入国在留管理庁と文化庁は、2020年に「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」を、2022年に話し言葉編にあたる「話し言葉のポイント」をまとめ、行政の窓口だけでなく職場でも使える作り方の手順を示しています。

(出典: 出入国在留管理庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」)

この記事では、このガイドラインの手順をもとに、技能実習生・特定技能などの外国人材(2027年4月からは育成就労)へ現場で指示を出すときのやさしい日本語の作り方と、そのまま使える言い換え例文を解説します。
伝え方の基本は「外国人がわかりやすい日本語の伝え方とは」で扱っていますので、あわせてご覧ください。

やさしい日本語を作る3つのステップ

やさしい日本語を作る3つのステップの図。日本人にわかりやすい文章にする、外国人にもわかりやすい文章にする、わかりやすさを確認する、の順に進める

ガイドラインは、やさしい日本語を「日本人にわかりやすい文章」「外国人にもわかりやすい文章」「わかりやすさの確認」の3段階で作るよう示しています。 口頭の指示でも順番は同じです。

ステップ1:伝える情報を整理して、一文を短く切ります

最初に、いま伝えたいことを1つに絞ります。 「午後から部品が変わるから、先にパレットを片づけてから段取りを確認して」のように一息で言うと、外国人材はどこが指示なのかを聞き取れません。
一文に言いたいことは1つだけにし、3つ以上の内容があるときは番号を付けて、作業の順番どおりに話すのが基本です。

ステップ2:外国人材にもわかる言葉に置き換えます

次に、専門用語・略語・カタカナ語・敬語を、日本語を習い始めた段階で覚える言葉に置き換えます。
「段取り」「養生」「申し送り」のような現場の言葉は、意味を分解して言い直す語と、実物や写真を見せながら教える語に分けておくと迷いません。
ガイドラインが挙げる置き換えのうち、現場の指示に特に関わるのは、曖昧な表現を使わない、二重否定を使わない、受身形・使役表現を避ける、敬語は丁寧語だけにする、の4点です。

ステップ3:伝わったかどうかを確認します

最後に、相手が理解したかどうかを言葉で確かめます。
「わかりましたか」と聞くと、外国人材の多くは理解していなくても「はい」と答えますので、「何を、いつまでにしますか」と聞いて相手の言葉で言ってもらいます。

復唱の進め方は、「外国人材の「わかりました」―ミスを防ぐ現場の確認方法」で詳しく解説しています。

指示を出すときの言い換えルール

外国人に指示を出すときの言い換えルールの表。曖昧な言葉、否定の指示、敬語、カタカナ語、受身や使役、時間と数の言い方を、やさしい日本語に置き換える例

話し言葉で守る基本は「はっきり言う・さいごまで言う・みじかく言う」の3つで、ガイドラインはこれを「ハサミの法則」と呼んでいます。
そのうえで、曖昧な言葉・否定の指示・敬語・カタカナ語・受身や使役・時間と数の言い方を、表のように置き換えます。 7つのルールのうち、指示のミスにつながりやすい3つを先に説明します。

(出典: 出入国在留管理庁・文化庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン 話し言葉のポイント」)

① 文を短く切り、さいごまで言い切ります

途中で止める言い方は、日本語を習い始めた外国人材には文の続きが補えません。

伝わりにくい言い方:この材料、終わったら次のに移っといて、できれば早めにね。
やさしい日本語:この 材料が 終わります。つぎに、この 材料を 使います。3時までに してください。

文の終わりを「〜します」「〜してください」で止めると、何をするかがはっきりします。

② 曖昧な言葉を数字と名前に置き換えます

「ちょっと」「適当に」「なるべく」「だいたい」は、量も時間も決まっていない言葉です。

伝わりにくい言い方:ちょっと待ってて。あとで適当にやっておいて。
やさしい日本語:5分 待ってください。10時に、田中さんが 説明します。

「あとで」は時刻に、「適当に」は手順に、「誰か」は名前に変えます。

③ 否定の指示は、してほしい行動で言います

禁止だけの言い方では、代わりに何をすればよいかが伝わりません。
「やらなくていいわけじゃない」のような二重否定も、ガイドラインが避けるよう示している言い方です。

伝わりにくい言い方:ここは勝手に動かさないで。やらなくていいわけじゃないから。
やさしい日本語:この 機械は、田中さんと いっしょに 動かします。ひとりで 動かしません。

残りの4つのルールも、言い換えの形は同じです。

  • 敬語は丁寧語だけにします。「社長がいらっしゃいます」は「社長が 来ます」です。
  • カタカナ語・擬音語は言い換えます。「ガンガン締めなくていいから」は「ボルトは、ここまで しめます。これ以上 しめません」です。
  • 受身・使役は使いません。「材料は午後に運ばれます」は「午後に、トラックが 材料を 持ってきます」です。
  • 時間と数は具体的に言います。「なる早でお願い」は「今日の 3時までに、終わらせてください」です。

技能実習生・育成就労の現場で使う言い換え例文

技能実習生・特定技能などの外国人材が働く現場でよくある5つの場面の言い換え例です。
やさしい日本語側は、話すときに区切る位置がわかるように分かち書きにしています。

作業の指示

伝わりにくい言い方:これ、あっちにまとめといて。
やさしい日本語:この 箱を、あの 棚に 置いてください。

伝わりにくい言い方:段取り確認してから入って。
やさしい日本語:はじめる 前に、今日の 順番を 私と 確認します。

伝わりにくい言い方:ここ、養生しといて。
やさしい日本語:この 床に、青い シートを はってください。きずが つかないように します。

安全の指示

伝わりにくい言い方:そこ危ないから気をつけて。
やさしい日本語:止まってください。上から 物が 落ちます。

伝わりにくい言い方:ヘルメットのあごひも、ゆるいと意味ないよ。
やさしい日本語:ヘルメットの ひもを、きつく しめてください。

伝わりにくい言い方:合図するまで入んないで。
やさしい日本語:私が 手を 上げます。それから、中に 入ります。

建設現場の安全指示は「建設現場の外国人に安全指示が伝わらない―事故を防ぐ日本語教育」で整理しています。

時間と期限

伝わりにくい言い方:なる早でお願い。
やさしい日本語:今日の 3時までに、終わらせてください。

伝わりにくい言い方:明日、ちょっと早めに来られる?
やさしい日本語:明日は、7時30分に 来てください。

伝わりにくい言い方:今週中にはなんとかして。
やさしい日本語:金曜日の 5時までに、出してください。

体調と休み

伝わりにくい言い方:体調悪かったら無理しないでいいからね。
やさしい日本語:からだが 悪いときは、朝 8時までに、田中さんに 電話してください。

伝わりにくい言い方:有休は前もって申請しといて。
やさしい日本語:休みたい 日の 1週間前に、この 紙を 出してください。

伝わりにくい言い方:なんか熱っぽくない?
やさしい日本語:熱が ありますか。何度ですか。

介護の申し送り

伝わりにくい言い方:Aさん、今日ちょっとふらつきあるから見といて。
やさしい日本語:Aさんは、今日 歩くとき 倒れるかもしれません。となりで 見てください。

伝わりにくい言い方:食事、きざみに変更ね。
やさしい日本語:Aさんの ごはんは、今日から 小さく 切ります。

伝わりにくい言い方:コールあったらすぐ対応して。
やさしい日本語:ナースコールが 鳴ります。すぐに、その 部屋に 行きます。

介護の現場で使う言葉を学ぶ教材は、「外国人介護士向けにおすすめの日本語テキスト3選」が参考になります。

やさしい日本語と日本語教育を両方進める理由

やさしい日本語は受け入れ企業側の工夫なので、今日から始められます。
一方で、外国人材が理解できる言葉が増えなければ、言い換えに時間をかけ続ける状態は変わりません。
2027年4月1日に始まる育成就労制度では、就労開始前にA1相当(N5等)の試験合格または100時間以上の講習、特定技能1号への移行時にA2相当(N4等)、特定技能2号への移行時にB1相当(N3等)の日本語試験の合格が求められます。

(出典: 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」)

技能実習生は2030年前後まで現場に在籍しますので、やさしい日本語で指示を通しながら、外国人材側の日本語力をN5相当からN4へ伸ばす二本立てが現実的です。

日本語教育の義務の範囲は「外国人材の日本語教育―企業の課題と2027年からの変化」、A1相当の中身は「育成就労制度の日本語能力要件とは?」、技能実習生のレベルの目安は「技能実習生はどれくらいの日本語レベル?」で解説しています。

指示の言い換えが減る日本語力を育てる―むすびばの体制

N4合格に加えて、技能実習制度と同様に育成就労でも受け入れ企業が求めていることは、入ってきた外国人材に現場で日本語が通じるかどうかです。

むすびばが目指すのは、点数だけではなく現場で仕事が回る状態です。 オンラインのレッスンでは、次の3つの力を鍛えます。

  • 聞いて動く力:「この 箱を、あの 棚に 置いてください」と言われて、迷わず動けること。
  • 確認して聞き返す力:「3時までですか。5個ですか」と、自分から確かめられること。
  • 報告する力:「終わりました。次は 何を しますか」「ここが 痛いです」と、作業の結果や自分の状態を伝えられること。

そのうえで、制度の要件とも両立できる体制を整えています。

  • 登録日本語教員が在籍しています。
  • 就労開始前のA1相当・100時間講習に対応できる体制があります。
  • 福岡での入国後講習に対応しています。
  • 就労開始後も100時間の日本語教育を継続して行います。
  • 特定技能移行に向けたN4対策プログラムを実施し、N5相当からN4合格までの3年間を伴走します。

建設に特化した日本語コースを業界で初めて開設しました。
介護・製造業の現場でも、職場で毎日使う表現からレッスンを組み立てます。
料金は1コマ60分・1,000円で、入会金・教材費は無料です。

よくある質問

Q1. やさしい日本語は、分かち書きのように区切って話す必要がありますか

話すときは、分かち書きの位置で短く間を取る程度で十分です。
N4以上の外国人材には、ふつうの速さで短い文を使うほうが自然に伝わります。

Q2. 翻訳アプリがあれば、やさしい日本語は必要ありませんか

翻訳アプリに加えて、やさしい日本語を使える状態にしておくことをおすすめします。
騒音のある現場、手がふさがっている作業中、緊急時は、アプリを取り出す時間がありません。

Q3. やさしい日本語で話し続けると、外国人材の日本語が伸びなくなりませんか

指示はやさしい日本語で確実に通し、日本語の学習はレッスンで別に進める、という分け方が現実的です。
現場の指示だけでは語彙や文法は体系的に増えませんので、特定技能への移行を考える場合はN4対策の学習時間を別に確保しておくと後が楽です。

Q4. 敬語は使わないほうがよいのですか

受け入れ企業が指示を出すときは、丁寧語だけにするのが基本です。
介護の現場で利用者やご家族に話す丁寧な表現は、外国人材が学ぶ側として身につけるものなので、レッスンで扱います。

この記事を書いた会社

むすびば株式会社は、技能実習生・特定技能などの外国人材向けにオンライン日本語教室を運営し、人と人のいい関係性を築く日本語教育を理念としています。
建設・介護・製造業の現場で毎日使う表現から組み立てた少人数・会話中心のレッスンを、1コマ60分・1,000円、入会金・教材費無料で提供しています。
登録日本語教員が在籍し、福岡での入国後講習、就労開始前のA1相当・100時間講習、就労開始後の100時間の日本語教育、特定技能移行に向けたN4対策プログラムに対応しています。

現場の指示に使える資料をダウンロードできます

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やさしい日本語の指示を現場全体に広げたい場合は「全職種向け」を、建設現場の安全指示が中心なら「建設業向け」を、
介護施設の申し送りや利用者対応が中心なら「介護士向け」を、
入国直後の外国人材の講習を検討中なら「入国後講習」を選んでください。

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